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【3回】粘度測定の科学

レオロジーの重要性

前回、前々回と、粘度をコントロールすることがいかに私たちの生活や社会の中で意味を持っているか、身近な話題から見てきました。
粘度が極めて重要な役割を担っているレオロジーは、物質の流動と変形を扱う科学と捉えられています。
その研究は工業分野ではポリマーや塗料・インクなど、バイオ分野では生体や食物、天然繊維などにおける開発で、現在、主要な技術となっているわけです。
ちなみに、レオロジー(rheology)の”rheo”は、”流れ”を意味するギリシャ語です。

レオロジーは時に、”基礎研究と応用開発をつなぐ”といった言われ方をされる事があります。
現在、物質単体の化学特性を解明するテクノロジーは飛躍的に進んでいます。
伴って、Aという特性を持った物質、Bという特性を持った物質、Cという特性を持った物質・・・を合成し、新たな特性を作り出そうという試みも自然と進展しています。
画期的な工業製品の開発には、まったく新しい特性を持った物質の開発がキーとなるケースはしばしばあります。

こうした新しい特性物質の応用では、機能を特定するにも、実際に製造ラインに載せるためにも、その物理的性質の追求が極めて重要となります。
まさにレオロジーの活躍が期待されるゆえんです。
しかし、現実には、粘度や粘弾性といったレオロジーの指標は、なかなか正しくつかみ難いのが現実です。
以下にまとめますが、その測定には、正しく専門的な知識と技術が必要なのです。

粘度測定はとっても難しい?

ペンキであれ、食物のテクスチャーであれ、それが実用に最適な粘度かどうかだけを見るのであれば、実際に試して見れば一目瞭然でしょう。
ところが、これらのものは、常に一定条件下で使用されるわけではありません。
使う人(食べる人)の力具合によって、あるいは使用する場所やその時の温度、使用する機器の種類などによって、ペンキのたれ具合や食感は変わってきてしまいます。
これを裏返すと、粘度計測の難しさに行き当たります。
物性に対する知識がないと、あるいは適正でない測定方法をとったのでは、全く的外れな結果を得る事になってしまうかもしれません。

ではその粘度計測について、液体のレオロジーを基本に簡単にまとめてみましょう。

粘度とは、「液体の流れ難さ、あるいは粘っこさの程度を示す物質定数」で、これを粘性率あるいは粘度といいます。
力を加えて流したときに、内部に摩擦を生じて止まっていく、すなわち、押し流す力に抵抗する性質が粘性です(粘度=ずり応力/ずり速度)。
こうした物性を測定するときに、液体の流れの速度や、押し出す力によって変化が出ずに、どんな測り方をしても同じ粘度値が得られるもの(粘度がずり速度と時間に依存しない流体)を、「ニュートン流体」、または「ニュートン性流体」といいます。
水や、ベンゼンなどの低分子の液体は、通常ニュートン流体とみなされます。
式にすると、s=ηD で表されます。
(s:ずり応力、η:ニュートン粘度、D:ずり速度)

▼ずり速度(せん断速度)
ずり速度とは、ずり変形の時間的変化を表すもので、ひずみ速度の一種です。
ずりの方向の単位距離当たりの速度変化、すなわち速度勾配を意味します。

▼ずり応力(せん断応力)
ずり応力とは、ずり流動面の単位面積あたりに作用する力のことです。

ところで、液体がみな、この方程式に当てはまるわけではありません。
むしろ、産業界で有用とされているような高分子の液体は、そのほとんどが当てはまらないと言っても過言ではないくらいです。
どう当てはまらないのか、例えば、粘度がずり速度、時間によって変化をします。
こうした流体を「非ニュートン性流体」といいます。
ペンキ塗りで言えば、刷毛を動かす速さ(ずり速度)によってペンキは粘度が低くなりスムーズに塗れます。
塗り付けられた後ではずり速度がゼロになりますから、高い粘度を取り戻します。
こうした性質によって、スムーズな塗り心地とタレ難さが両立されるわけです。
このペンキのように、一定ずり速度において見かけ粘度が時間とともに減少し、ずり応力を除くと徐々に復元する性質を「チクソトロピー性」といいます(詳しくは第1回のコラムをご参照ください)。
「チクソトロピー性」とは反対に、一定ずり速度において見かけ粘度が増加する性質を「レオペキシー性」と言います。
「非ニュートン性流体」には、時間に依存した流動特性を持った上記2つの他にも、擬塑性、ダイラタント、塑性(ビンガム、非ビンガム)などがあります。

豊富な計測ノウハウを、ぜひご活用ください

対象が「ニュートン性流体」であるのか「非ニュートン性流体」なのか、「非ニュートン性流体」としてどの性質を持った物質であるのか、レオロジー測定では確実にそれらを突き止めなければなりません。
検査の方法、測定機器、条件設定など適正に準備することが出来ないと、正確な結果を得られないばかりか、非常に多くの時間を要する事にもなりかねません。
前述のように、素材の流動性(粘度)を適性に管理することは、現在の主要産業、ひいては私たちの生活に必要不可欠な技術です。
そして、現在、ゲルを始めとしたコロイドや高分子である有用性の高い素材原料の類では、「液体の流れ難さ、あるいは粘っこさの程度」を扱うだけでなく、同時に粘弾性もコントロールしていく事が必要となっています。
より高度なレオロジー測定を導入するケースでは「レオメータ」、あるいは特に食品テクスチャー測定では「クリープメータ」等を使用することが、有効な検証(結果の獲得)として必要な場合もあります。

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